神戸からの仕事の依頼 ≪1≫  2002.8.1  記

6月頃だったろうか? 

それは・・・・神戸からの仕事の依頼で
是非相談に乗って欲しいという
数行のFAXが事の始まりとなった。

突然、神戸と聞いて、
・・・・瞬時に自分の頭の中を巡った事と言えば、
(今は仕事も十分だ、 距離的に遠い事、 予算的に合うだろうか?
無理せず上手く断ろう)と、そんな思いであった。

それから、
その神戸、≪?エコやBaoBab≫なる会社から連絡があり、
依頼主である母親が、俺の壁を強く望んでいるという話の中で・・・

その思いの深さと驚くべく実話を知らされて、

自分の気持ちが・・・


“本当に、この俺の仕事でいいの・・・? 
果たしてこの俺にそんな大切な塗り壁が出来るだろうか・・・?”
                        と、変わり、

正直なところ、身の引けるような気持ちに、
            さいなまれてしまう内容であった・・・

・・・こんな話である。

ある中学生の男の子がいて、
その子は、快活なクラブ活動のキャプテンであったという。

ある日、指導者である先生がクラブ全体に喝を入れる為、
             そのキャプテンを強烈に鍛えた・・・

それは暴力に近いものであったとされ、
もちろん具体的な事までは解からないが、結果的に、
その子は、身体の機能をほぼ、失ってしまったというのだった。

当然、神戸はもとより全国的なニュースとなり、
         この1月に勝訴の和解で一応の終結となった。

・・・それで、母親は現在(18)入院している
           子供〔勝平君〕の家を病院近くに新築し、

その勝ちゃんの部屋と、
   様々な障害を抱えた子供達の集まる事の出来る、
      憩いの空間を合わせて介護を続けていきたい・・・。

 
そして、母親は母子家庭である為に仕事と介護を両立し
                気丈にして、いつの日か、

わが子が必ず回復してくれると信じているという。

 
そんな中でこの二つの空間と、
建物の正面外部の壁を、この俺に塗って欲しいと願っている…
 
こんな話を知って・・・
これをまず、自分がどう受け止めたらいいんだろうか?
                    と考えてしまう。
 

ああだ、
 こうだと理由をつけた末に断ればそれは所詮逃げに等しく、
             後悔に繋がる・・・ヤルシカナイ
 

俺なんてと、
単なる一職人としてある程度の所で、そつなく仕上げればいい・・・

それも出来ない、自分の失格。 

それなら、たとえ一人よがりであっても、
      自分流の答えでで受け止められるかどうか・・・
 

人間として気持ちとして感じ取れたとしても、
それを塗り壁の職人として、形として受けて現せるかどうか?

 

意思表示ひとつする事が出来ない子供が、
       否応無く見つめ続ける壁面……、
                瞳に映す風景……
                      俺の壁。

そう考え始めると、
途端に自信が、なくなって消えてしまう自分がただ残る。

《物をつくらない物づくりを》…左官礼讃、文中?…

物をつくる事ではなく、自然の贈り物を受け取ること。

たぶん、左官塗りがこれからの建築の中で、
 なにか未来に頼む事があるとしたら、
   塗り壁の技術が物をつくることではなく、
     自然の贈り物を受け取ることにあろう・・・・

これだ、これなら出来るかも知れない、

まさに『立ち上がる泥壁』。
俺ではなく自然が仕上げる壁を立ち上げる・・・ 
      これなら出来るかもしれない、これしかない。

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