東京・・・・。               2008,12,6,記

2008/12/6

東京・・・・。

はじめて東京で仕事をしたのは、いまから6年前。
右も左もわらない、文京区のど真ん中で壁を塗っていた。  
それから間をおかず2回目となった仕事は、
         東京タワーを、のけぞってみあげる場所で、

心、ドキドキワクワクとさせながら自由に塗った一枚の壁がある。

東京タワーを霞めた淡い微風が、
        わずか数枚の花びらをさらったサクラの壁。


今もなお、そのときの高揚感と、その場所の一枚の壁が,
この東京を自分に強烈に焼きつけるはじまりとなり、
やがて運命的な歯車を動かしてゆく、 たいせつな壁がある。

【東京】それは自分にとって異国にも近かったひびき

時間がどこよりも早く強く、流れる街・・・・。 赤い点滅の光。

あの夜の空。
鉄紺色のひろがる空中に、蒼銀色の透明な線が、
怖ろしく走り、突き抜けているのが見えていた。

ホームに立っていると、ざわめく響きは徐々に薄れて
たくさんの人とすれちがっても、それはただ、
人の形にすぎず、
自分もまた、ひとつの形であることが、
すがすがしく、また悲しく・・・

地域の中で、はみ出し、行き場を失いつつあった自分には、
この巨大で孤独な地にまぎれて、
東京タワーの根元にたち、

オレンジに光る4本の足に、踏みつぶされるまで
この存在を試し、計りつづけられる場が与えられたなら・・・・
         と、願って止まなかったことを忘れない。

自分を試したい
切れて・・・抜けて・・・消耗しながら形をあらわし、
壊れてゆく時間が与えられたなら、
どれほど納得がゆくことだう

そう、願うと突然、
頭の芯から喉の奥に押し震えるものがはしって
            吐き気で口があけられず黙りこむ・・・。

早朝、
まだ暖かさの残るアスファルトをはった、生ゴミの風が吹き、
自分を一周してすぎると,不思議に勇気づけられて胸が熱く高鳴ってくる

人の流れにさからわず、気力を内に秘めていると、
周り全てが映像のように見え始めて、
  孤独な視線は、さらに鋭く研げていた。

ところが、この数年、
蒼銀の線は消えて、
   琥珀のガラスのように見えていたタワーからは、

あの時の空の・・・。透明な感覚が、
いつの間にか消えてしまっていることにきづく

自分の何かが変わった?・・そう思うと、
体中にまた別の震えが走りだして恐る恐る問いかけている。

・・・・どうした
    感覚を失ってしまった・・・・? 

もしかしたらお前は、
形あるまま壊れてしまっているのか・・・?
知らぬまに、お前は違う者に変わってしまったのか・・・?

それとも、
  もう疲れ果てて、使い終わっているのだとしたら・・・?

それからの東京は
漠然と迷い、さまよう日々へとかわってしまった

そうして、そのまま・・・・長い月日が過ぎさって
   ・・・・ひとつの終わりを受け入れはじめている自分

もう俺は、あの夜の空の感覚には、
もどることが出来なくなってしまった?
        ・・・・・消えた琥珀のガラスの塔。

ある日
小雨の路上、重いバックを片手に振りむくと、
オレンジ色の霧のなかにタワーが霞んでいるのを見上げていた

あくる日、同じ場所でタワーは、
ぼんやりとした姿のまま深い霧の中に包まれ、
             うっすらと消えていた。
              

・・・もう見えない・・・

それでも、腐っていたころの自分に立ち返ることで、
       この街に立っていられた喜びを噛みしめていた。

数日後、バックを片手に、再び同じ場所に降り立ったとき
タワーは、雲ひとつない鉄紺の空にそりたって
まぶしい、鮮明なオレンジのひかりが
眼につきささってくるように迫って見えた。
そして、その場に、ただ捕らわれ、立ち尽くした

急に胸が隆起しだして、
喉元が押しひらかれるような感覚におそわれ
そのまま、幻想に引き込まれるた・・・。

開かれた喉いっぱいの食道から
植物的なツルが、
  体を浮き上がらせるほどの勢いではしり、

あごを突きあげ
   舌を押しだし
     腹の底から吐きのびて空中に、
       螺旋を描いて絡み付いてゆくようなシーンだった・・・・

ふっと我にかえった
ふたたび歩きだす。

歩きだして数秒
ある・・・ある・・・と、つぶやいて、
もう一度、振りむきタワーを見上げると・・・

タワーはそのまま、強烈で鮮明なひかりを自分に焼きつけ、
          そして、こころの震えがもどっている。

見えた!

これは、あの夜の空にちがいない・・・。

まだ壊れてはいない・・・

目を開け!・・・・まだできる!

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