8年前の独立、職人社秀平組を結社して2年目。
日々の仕事の受注も、ままならない日々のなかで、出逢った洋館。
大正四年。
それは飛騨に建てられた土蔵風のハイカラな建物で、
室内には「西洋室」という棟札が掲げられてあった。
洋館は崩壊寸前で、
修復など誰の目にも不可能に思えるほど痛みが激しく、
いわば見る影もない状態だったが、
自分はそのとき、何か直感的に遠い理想の、夢の世界を垣間みたような…
そんな気持ちになった事が、はじまりとなった。
・・・・もしも自分が、
この土蔵風の西洋室を手にいれて
築100年の威厳と、この空間が放つ不思議な魅力を残しつつ、
俺の感覚で、モダンに進化させながら生み変えることが出来たなら、
どんなに素晴らしいだろうか?
(たぶん俺なら、うまくやれる!)と、そう直感したことを覚えている。
・・・・穏やかな山林、なだらかな斜面、
風にそよぐ樹々のアプローチを歩いていくと、
自然林はポッカリとひらけて、
そこに凛として、あらたに生まれかわった究極のゲストハウスが、
たたずんでいる・・・という光景。