悲しい仕事  “古い町並み、飛騨高山”( 2011年12月28日 記 )

そもそも十年前。
自分達が職人社秀平組を結社したのは、

同じ会社内で憎しみあったり、
        いがみあったりすることに
               我慢できなかったから。

仕事とは、
  お互いが認めあったり、
     追求して高めあってこそ達成感と充実感が得られるもの

そうした生き方をしていこうと、
           我々は安定を捨てて、飛び出したのだった。


もっとも嫌なこと、
もっとも無駄なことは・・・・≪人と争っていること・・・≫。
                         
                   ただ、ただ、それに尽きる。

この事件が起きてから9ヶ月が過ぎた。

地元の、ある経営者から自分が受けている、
あまりにも非人間的で、かつ非社会的な行為の一部始終を、
                    記さずにはいられない。

高山の観光の中心、上三之町。

古い町並みにある造り酒屋の経営者が、
ここ数年、店内を大きく改装しているのだが・・・・。

ことの始まりは、2010年の11月

依頼者は、この店の経営者社長と、その孫にあたる店長、

この二人からの職人社秀平組への仕事の相談は、
                ざっとこんな話からはじまった。

・・・以下、感情をまじえず、現在に至る経緯を記す・・・

依頼者からの、話は、
現状の改装工事の中で、店内にある土蔵の内装が気に入らない。

           飛騨高山にはVIPな人間を受け入れる場がない。

それで、
もう一度作り直したいと思っていて、この土蔵を、日本酒BARにしたい。

ついては、

ある程度の金がかかってでも、
    市長や知事級のVIPを招いて、
          恥ずかしくない形にしてほしい。

その際、2階は使えなくてもいいから、
   この階段を撤去し、1階をひとつの空間として、
       お前の思う最高な空間を考えて施工してもらいたい。

細かいことに、いちいち注文をつけるつもりはない。
いっさいがっさい、全てを任せるから、

一流のものを作ってもらいたい。
      できるなら、インテリアも任せたいくらいだが
           とりあえず土蔵の内装を手掛けてもらいたい。

わかりました。   ・・・・

ここは飛騨高山の中心である事、
そして、高山も最近では、本物志向が薄れつつある中で、
          この街並みの為にも、素晴らしい事だと思います。

その期待に応えられるよう

地元の素材を使ったイメージを考えて、
喜んで提案をさせてもらいたいと思いますので、よろしくお願いします。

12月下旬、
   土蔵改修の内部模型と、実際の塗り壁サンプル。
         そして展開図をつくり、見積書を持って説明に行った。

見積書とサンプルを見た社長と店長は、
          これで良い、楽しみな事になった。

社長は、・・・とにかく、酒BARとしてVIPを迎えるに、
         ふさわしいものを作ってくれるのなら、
                    この見積り金額をまけろ、

というようなケチなことを、言うつもりはない。
                了承したから、これで進めなさい。

そして、
この土蔵には名前がないので考えてみてほしい
その上、看板をサービスのひとつとしてやってくれないか、

というのでこちらも、僕の考えられる範囲でいいのなら、
                       と、快く了承する。

工事中・・・・

我々の作業の進行状況を、社長は店に訪れる来客に、
これは、職人社秀平組の挾土秀平にやらせているのだと。

何度も何度も自慢げに見せては話し、仕事の状況確認をしている。

基本的に連絡の一切は店長が窓口となり、
             工事期間中、とても良好な雰囲気。

長い間、この店にふさわしい名前をやっと考え出した自分は、
           《 宵小菊 》と命名して 店長に説明して手渡した。

小菊と付けるのは=小さなBARであること。

そして、( こぎく)という潔さと、響きの良さ、
   それに、酔う=宵い(明け方まで語り飲み明かしましょう)
                        という意を提案した。

数日後、作業も終盤を迎えて土蔵の仕上がり具合を見にいくと
店内の向こうにいた社長が、突然、自分に大きな声でこう言った。

『おい!、あんな中国のような名前はダメだ、
            俺は、3文字は嫌いだ、2文字にしろ!』

考えに考えた精一杯の名前だった。

しかしやはり施主に納得して貰わなければと、
           2文字の名前を、もう一度時間をかけて考え、

≪ 緋粋 狸々 彩紅 寒紅 紅紫 笹紅 猩紅 ≫
                  7つの案を店長に渡し、

(できるだけ土地の歴史や願いのある名前。響きを大事にしたい事)
(この土蔵内部は、飛騨の赤土を中心にして塗り込めたこと)

それから後、

店長に工事の完成を報告すると、
      店長は社長も大変気に入り、
          全く問題なしということで、
                 本当にいい店になりました。

こちらも、ありがとうございますと頭を下げ
   店長も確かに工事を受け取りましたと、二人で握手を交わし、
                        引渡しが完了した。

数日後、3月10日の事であった。
            店長より連絡がある。

社長が挨拶を受けていないというので来てくださいという。

こっちは喜んでうかがいますと、3月18日再び出向いた。

そうして、2階の応接室の席につき、
このたびは本当に、ありがとうございました、と、お礼を言うと、

・・・・突然だった・・・・

社長が、あのカウンターは何だ!!という厳しい口調!?

               ・・・・ハアっと意味が解らない。

いいか!
壁の仕上げについては問題ない、
      しかし、あれでは料理が出せない!

いいか!
この土蔵の中で、料理を作って出す許可を取ることはできないが、
店内で作って出すことはできるし、

この先、土蔵内で料理をした場合、
料理人が直接客に手が届かないことを、お前はどう考えているんだ!!

だいたい、割烹料理というのはなあ
板場から差し出すことができなければ、何の意味もない。

いったい、どうしてくれるのだ!! ・・・・と、怒っている。

こっちは、ビックリ、あぜんとした。

私はまず、

日本酒BARを作りたいということに対して作ったのであり、

割烹料理を出すとは、今、驚きの初耳で、
           一度も聞いたことはありません、

と答え、

また古い酒絞りの台に、
カウンターバーをつけたいという趣旨は工事前から説明してあり、
そのカウンターバーの寸法も最小限の幅にしていることから、
これ以上は、どうしようもないと説明し、

この状態は工事期間中、社長、店長とも、
              毎日何度もみているはずであり・・・・

と話しても知らぬ存ぜぬ態度。

隣にいる店長は、首を傾げたり、眼をまばたきさせてダンマリ。

さらに社長は、
お前は左官だが、これが設計士なら3流だぞ!

そして同席してもらっていた現場管理人に、
だいたい、お前の会社も、こんな左官を使っていたら、潰れてしまうぞ!!
などと意味のわからない暴言を吐いている

自分は、あまりの意味不明な突然の相手側の態度のに、

どうしても料理を直接手渡したいのなら、
     あのカウンターバーは取り外しができますので、
             はずしましょうか?というしかなかった。

すると社長は、蔵の名前が決定しない、
          どうしてくれるのだ!
 
                と、全く違う話にすり替わる。

2文字の名前を出していますが?と、答えると、

これを見ろ!と、メモを取り出し、

おれはこうして、
  従業員から名前のアンケートをとっているが、
                  どれも気に入らない、

俺の中で、この心にきっちりとはまる名前でなければダメだ!

いいか、名前というのは、店の運命を決めるくらい大事なもので、

子供の名前くらいに重要で、字画から全てを考え、
           長い間使うほどにいいものでなければならない。

いいか!俺の心にピッタリくるものでなければならない!
いいか!俺はお前を許さん!
いいか!俺の心にピッタリな名前を考えろ、約束は約束だ!

はあっと、・・・・《 許さん 》とは・・・・どういう事ですか?

その後、2度ほど話し合いの場についたが、
     こんな調子の信じられない会話の連続。まともな話にならない。

お前は意外と有名だから、
お前の名前は自由に使わせてもらうのが条件だとか・・・

若い店長も、まずい顔を強張らせながらも、

あなたの態度も悪いだの、頭を下げて、謝罪してくださいだの

      立場的には、こっちが上でそっちが下ですから!という始末。

こんな調子の、あまりに理不尽な、
         理解に苦しい、いきなりのやりとりに、

話すたびに、
  怒りを抑えきれず頭が真っ白になり、
  思い出せない局面が多い。

理性を失わないうちに、
こっちまで暴言を吐きそうで、たまらず席を立つしかなかった。

しばらくして、店長から電話がある。

なぜ、謝罪にきてくれないのですか?
もし、お金を払った場合は、これまでの経緯を水に流して頂きたいという。

もう、イイカゲン敬語も使えなくなっていた自分は、

あのな?、そんな事はちゃんと金を払ってから言え!と、答えると

お金を入金した場合、看板の文字を書いてもらえますか?
そして、秀平さんの名前は使わせて貰えるんですよね・・・・・・

バカバカしくなって、
        もう話す気にもなくなり電話を切った。

電気工事、解体工事、大工工事、漆職人、塗装工事、左官工事、
他ガラス・・・・・占めて428万円。

工事が完成してから9か月、入金は、いまだ一円もない。

それから、地元の人にこの件を相談すると
「やっぱり」とか「お前もそうか」という人が何人もいた。

まだまだあるが、みっともないのがダラダラ続くので、ここまでにする。

独立前に、安曇野で発見した奇跡のうさぎ。

これは、土蔵を依頼した家主に職人が、漆喰を盛り上げ、
この家の子孫繁栄を願って贈った感謝のしるし。

うさぎを贈られた家主は、これを喜んで受け入れ、それから百数十年、
折れた耳と、取れてしまった波しぶきの玉を釘でとめ、大事に守っている。

ものを作る側と受け取る側、そこに、
 《ありがとう》と《ありがとう》がなければ、
       作った物からの喜びは無く、その物も死んでいるに等しい。

それにしても、なんなのだろう・・・・
        “お前を許さん”だの、“謝罪”だの
            まるで、法廷に立っているようである。

お互いのすれ違いや、誤解が生じた?  
・・・・そんな話ではない。

このような仕事に関わってしまったことに、

精一杯、技能を発揮してくれた職人衆の気持ちと落胆、
こんな理不尽が通っている、郷土飛騨への悲しみと失望。

                 ただただ、後悔があるだけである。

“悲しい仕事  “古い町並み、飛騨高山”( 2011年12月28日 記 )” への7件の返信

  1. 溢れる情熱が健在だとテレビの放映をなつかしく拝見してます。
    悲しい仕事、、、、挾土さんらしい表現ですね?
    この3,4年 海をみながらのんびりしてます
    暮れに有機米をつくりたくて田んぼを買いました
    小さな朽ちた小屋があってそのトタン板をはがして、
    自然農をめざす素敵な若い人と下見板を張り修繕中です
    今年は苗床をつくって手植えで米つくりが楽しみです

    諸悪が世界を凌駕するいやな時代ですが
    がんばってくださいね
    高山にいったら
    元気をもらいにまた伺いたいと思います

  2. 読んでて、怒りとむなしさみたいなものが伝わってきました。見積りも見て、現場にも顔を出していたのにこの対応は明らかにおかしいです。全国でこのようなことが現場でおきていると思うと、職人さん達はうかばれませんね。この社長とか店長は、人とのつきあい方とか、礼儀とか基本的なものが欠如している気がします。

     これからも土と泥のすばらしい仕事を応援しております。

  3. 再度、アップなさったということは、依然、解決していないということですね。何かの拍子に豹変する……信じがたいのだけれど、そういう人はたしかにいるのでしょう。店長は板挟みになっているのでしょうが、その方か、どなたかまわりの方が間に入って、仲裁できないものか、と思いました。

  4. 理不尽極まりない話ですが、もう書き込みはこれくらいで、私も心情的には許すことはできないですが、何度も書かれると、狭土ファンは辛いし苦しいですよ
    小林さんも言われてますが、秀平はいい文章書くよと・・・・
    狭土さん本来の発信期待してます。

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