東京の休息

去年からの数か月。

雄勝、荒浜の海での巨大な壁制作(11/19?12/3)
ホノルル、ワイキキを見下ろすペントハウス(12/13?12/25)
そしてキプロスを旅した地中海(1/8?1/22)

どれも自分にとっては、
    初めてのチャレンジばかりで、
           そこにはいつも海があった。


去年の9月くらいから、
   雄勝へは何度も足を運んでいたから、
      
       この数か月、俺はずっと海を見ていたように思う。

飛騨に住み、出不精だった俺

人生のほとんどを、
   海を見ることもなく暮らし、

大海原を目の前にして
   こんなに長い時間を過ごしたことは
               初めてだったと思う。

海が見せる波や色・・・・。

太陽の光の強さと高さ、
   海の深さや広さを
      身体に受けて計っているかのような時間。

絶えず変化を繰り返している
         美しさと激しさに、

いつの間にか思考を奪われてしまっているというか、
   ぼんやりとしながら消耗しているかのような感覚があった。

典型的な山人だから、広大な海への憧れがたぶんある。

けれど・・・やっぱり海は苦手。

           美しくて恐ろしい海。

その証拠に、

海の風景の中にいると、
  自分は何かを創造的にイメージしたり、
      頭の中に描いていることがあまりなかったように思う。

ただ海を眺めているか、
  目の前の仕事に集中しているか、
        そのどちらかだった数か月。

キプロスから戻ると、

さすがにあちらこちらからの連絡や、
           小さな仕事が山積み。

取材や講演なども重なって、
     それらをざっくり終えると、

少し気が抜けたせいか、

風邪気味になって眠り込んだり、
 その眠りがやっと戻った時差のゆがみを呼び戻してしまったりと、
            不規則でバラバラなリズムが続いていた。

8日前、打合せやらレセプションがあって東京へ。

深夜0時頃、酔うほど飲んではいなかった。

何か気分が重苦しくなって、
   カウンターを離れて外へ出た瞬間、

額が汗ばんだかと思うと、
   針が走るような強いめまいがして、グラッと瞬間がねじれた。

一歩先のガードレールに片手、
   もう一方で走り抜けるタクシーを本能的に止めて、
                  倒れながらなだれ込む・・・・。

カーテンを閉じた薄暗いホテルの一室、
         そのまま丸一日半、横になっていた。

一晩眠って、
 めまいはあの一瞬のみで元に戻っていたが、
          外に出る気持ちに全くなれず、

                 そのまま横になっていた。

二晩目の朝方であった。

4:00、うっすらと目を開けると、

暗い部屋全体に
  切り紙を撒き散らしたような
        オレンジ色の光が映っているのである。

天井にも、四方の壁にも、
   寝返りをうったこの右半身にも・・・・。

カーテンのわずかな隙間から差し込んだ街の光が、
          グラスを透して投影されているのである。

           それはまるで切り紙模様の不思議な光の部屋。

今、くしゃくしゃになったシーツに、
          自分の影が伸びて・・・静かである。

自分よりも遅い時間が漂い、ただ静かなのだ

そのまま何も考える事もなく、座っていた。

吸い込んだタバコの火玉に、
        視線を重ねると
     
あたりがぼやけ、気持ちが脱力して、
     身体から余計な熱が抜けてゆくのが見えるような、

                 ゆっくりとした時間が流れていた。

遠くかすかに届いている車の流れが、

清々しくて静寂で何とも言えぬ安心と落ち着いた心持ちなのだった。

これは単なる疲れか?
いや、海のせいに違いない。

海の力は、見入ってしまうほどに強くて、
       吹きつける風を飲み込みつづけて、

              自分が自分でいられないような・・・・。

最近では飛騨にいても、
   いつも過剰に自分を張っていなければならない
                窮屈さを感じはじめていて、

ごくまれに、あんなに静かな地元の暗闇が、
     カオスのように動きまわってうるさく
                眠れないこともある。

いつの間にか慣れてきた東京は、

穏やかな雑踏の夜の底に、
      切り紙のようなオレンジの光を音もなく注いでいる。

その夜の底には、不思議と心休まる一片の時があった。

                       休息の東京の夜。

                (注)・・・・今は健康である。

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