遠いニューヨーク

10月2日、3日
浜松の仕事をたぶん、何とか切り抜けて。

高さ2・5m、長さ18mで一枚を2面、
施主から、爆発しているような雰囲気を叶えて欲しいと言われた壁は
仕上がりの表情も、限られた時間も
吐きそうな思いをしながらの一発勝負だった

こだま666号13番E席。

今、座席シートを深く倒して、タバコの煙と一緒に、
どーっとため息を吐いている。


車窓には大きな川

10分ほどたって・・・
「 ああ、あれが天竜川かぁ・・・」と、ボーっと思う。

窓に流れている
   稲刈りの終わった水田を眺めながら
数ヶ月、 風景を感じる間もなく仕事に追われたままの俺。

一年半前から準備してきた、東京大手町の大仕事が始まりだった

これが4月から現場作業に入る予定だったのが、
遅れに遅れて3ヶ月(どうなってんの?)
7月からの大突貫工事となった。

秀平組は

6月から7つの物件の予定が、11月まで決まっていて、

相手方との打ち合わせも
    期日が迫るごとに密になり、
         再再確認の試作、材料準備と本番作業。

一年前から予定に入っている数回の講演や新聞雑誌等の取材の数々。

一方で、たぶん一世一代になるだろう、

銭金抜きの究極の仕事はぞくぞくするような
     東北の歴史的なロマンたっぷりの大プロジェクトで

書類、予算、施工計画、折衝など、

ひとつひとつ確実に、
慎重に進めなければならない局面が、定期的に続いている。

そこに6月からの物件も遅れるものがあって、
             まるで高速道路の玉突き衝突状態。

玉突きの中で、来年の仕事依頼の話もくる(こなければまた困る)

14人の職人衆皆が、飯を食って行くには
新しい仕事の打ち合わせは、日常として喜んで出向き、受け入れなければ

秀平組の仕事の流れがブツ切れになってしまうから
どんなに忙しくても、これには優先的に時間をさかなければならない。

その他に

大阪の住宅・・・・20種ぐらいの壁の提案とその試作サンプルの制作
表参道・四ツ谷・伊東・横浜・大手町・本郷三丁目等・・・・の計画
東京から東北へのとんぼ返り。

昔、恩義のあるゼネコンから、
どうしても納められない仕事があって
一肌抜いで欲しいと頼み込まれて、名古屋の仕事を無理やり挟む。

あと、

隈 研吾事務所からの仕事依頼は絶対断らない

最高の建築家が直接声をかけてくれる、とは、
      職人冥利に尽きる新しい可能性のことだから。

俺たちの腕と感性を買われ、必要とされているのに
        答えられなかったら、我々は我々ではいられない。

今、海外を含めて4つの計画を進めている、(いずれも2年後あたり)
          しかし、その打ち合わせや、試作は今なのである。

玉突き状態は、さらに重なる

こんなにパニック状態でも、
12月以降は、たぶん、暇をもて遊ぶかもしれない不安。

住宅や空間と塗り壁は、
切っても切り離せなかった時代は終わってしまい
塗り壁は特別なものになってしまった現実で
14人の職人集団は、相当量の物件をこなしてゆく。

そしてニューヨーク、(文化交流使)の準備に追われている。

チェルシーでの個展作品制作・・・・その26作品の考案
作品に添える言葉と英訳、

ジャパンソサエテイの対談、NY私立大学や、
コロンビア大学での講演資料づくり、

ポートフォリオ、DMのデザイン、広告の有無、
ワークショップの計画、何人で何回、

現地で使いたい撮影や映像制作や
荷物の送り方、宿泊、通訳、他、まだまだ先が見えない・・・・

文化庁からの委託業社が中間で
細かな手続きなどのサポートに救われているものの

現状の仕事から、
  個展のパーティーのつまみまで、
      あらゆることの確認連絡がつづき

携帯が鳴り、わかっていながらメールの返信もままならない。

( あらゆることに、お金が絡んでいるからこれも仕方がない)

二週間前あたりから風邪ひいてしまった

たぶんそれと関係なく
深夜腹痛で目がさめて、のたうちまわった後、
すぐ異常なかゆみに襲われて頭皮から全身ボロボロ。

湿疹は翌日治まったものの、
  2日間腹痛がなんとなく収まらないまま東京へ
        いくつかの打ち合わせを経て浜松へ向かう。

地下鉄のホームで立っていられず
          だるくてしゃがみ込んでいる俺。

夜、眠るとき、
  体重が全部布団にめり込んで、
     身体中に感じる重力に、もしこの布団がなかったら

底なしの深いところに落ちてしまうような不安な疲れ

なにか静かな呼吸になれなくて眠れず
暗い部屋が、逆に集中力を高めて過敏になってゆく。

10月8日再び東京へ。

西麻布エントランスの仕事を切り抜けて翌日、飛騨へ

昨日、ようやくニューヨークで展示する作品が、
            なんとか完成し16日郵送する。

・・・もうひとつ

ニューヨークと同じくらい大事なことが、今日待ち受けている。

ほぼ一年ぶりに、あの井上氏が訪れてくれるのである。
なんだろう、言い表せないくらい自分を高揚させてくれる人なのだ。

井上氏からは、
俺だけのための素晴らしい宝を授かって、つかの間の夢の中。

しかし、

これから講演資料と荷づくり、
    準備に、まだ時間がたりないくらいである。

それにしても
この数ヶ月、途中で倒れるかと思うくらい動きまわった

        土曜、日曜、休日なんて、なにも解らなかった日々。

頭の芯まで疲れて・・・・
も?う、限界って、ひとり何度つぶやいたか。

そんな中で、しみじみ思うのは、

それがニューヨークということだろうか?

それくらいニューヨークとは、
俺にとって遠いところなんだ!と実感させられていること

これから40日という滞在が待っているなかで

いったいどんなことが起きるか?
どんな人との出会いがあるだろうか?
それともニューヨークは、
自分の限界を知る成れの果てとなるのか?

ただ、なにごともなく済んでしまうのかもしれないが

左官と日本を照らし合わせたとき
行きたいのでない。 行くしかない。

いずれにしても
社会に出てはじめてくらいの
ゆっくりとした長い時間になるのだろうと思う。

いよいよ19日出国。

休養を大切にして
自分自身の事も見つめ、考えたい。

それも

遠い、遠い、ニューヨークという時間なのかもしれない。

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