土の写楽に

ニューヨークに発つ前、
何人もの人に、アグレッシブにね、と言われて

それは、なんとなくわかっていた。


職人社秀平組は
     東京での仕事に恵まれ、
            たまたまのチャンスにも恵まれて

テレビドキュメンタリーや、雑誌の取材にしても
いつも、世の中のほうが、俺たちを見つけて表現し、

発信してくれた12年だった。

・・・恵まれ、発信してくれた・・・・・

逆を言うなら
自分達が自ら進んで、
時代に提案してきたとは言えないこれまで。

常に、受け身に立ち、待っていた
それは、求められたことに対して、
ただ全力で応えてきただけなのかもしれない。

ニューヨークでは、
アグレッシブに、という意味に突き当り
否応なく考えざるを得ない状況に追い込まれて
ベッドの上で、今、何ができるか?
それを見つけたとしても、どうしたらいいのか?
を、さまよったマンハッタン。

わかってきたニューヨーク流の活動のしかたは
自分の存在を、自分みずから発信して
たとえそれがゴミのようの扱われて、捨てられようと
情報を流しつづけてゆくということ。

ニューヨークに立って
10日が過ぎたあたりでようやく
自分から発信していかなかければ、なにも始まらない
そうでなければ、生きられない街だと気づく

『 私は貴方に提案がある
  その提案を実現させることによって
  貴方も私も、新しい幸運を得ることになるでしょう 』

と、誰もがプレゼンの機会を常に要求する。
万に一つの可能性であっても、堂々と主張する
それが、《Welcome to New York 》という意味だと。

そう気持ちを切り替えて、

40以上のメディアや機関に情報を流したり、
積極的にレクチャーの場を人づてに探したものだった。

今ごろ遅いが、本来ならこうしたことは
日本にいる時から準備しておくべきだったと
現地で肌で感じる・・・

それにしても、すでに時遅し、
ただ乗り込んでしまったNY
相変わらずの予習なし、
その無知さに呆れながら笑えた
しかし・・・何ともせつない日々。

自分の中では
チェルシーの個展で、

どんなものを見せるのか?
どんな言葉を添えるのか?
その一点だけに賭けていたように思う

作り上げるだけで精一杯だった出国前。

チェルシーでの個展がはじまって
2週間という長い時間は訪れる人達に、

自分は、自分をなんと言おうか?

アグレッシブな自分を、あれこれと
考えるでもなく浮かべていた長い時間であった。

レセプションパーティー前の会場は3日で3人。

《作品と自分だけの空間で
        連想ゲームのような思考が続いてゆく・・・》

ヨシ、俺は、
自分を日本から来た
新しい《写楽》だと言ってみようか?

昔から写楽という響きが好きだった。

考えると、

なるほど《写》して《楽》しむ。
意味もセンスも、仕事も抜群な写楽。

・・・そうだなぁ、

単なる土壁から
自然を写して個展を開き、今、ここにいるのだから。

小林さんがくれた手紙の
秀平の作品は、すべて水と土の花《刺青》という言葉
浮世絵を評価した海外なら、
俺は、新しい土の浮世絵だ! と言ってみるか・・・

《写》して《楽》しむ
それを土で、どう言おうか? と、浮かべている

すると

それが場面や風景を切り取る
宮澤賢治の《 心象スケッチ 》という言葉と

同じに重なりあっているようにも思えてくる。

自分なりの土の写楽に詩を添える、ひとつの俺達流。

そんな漠然とした、
人に説明することもできない直感を浮かべ
真っ白なギャラリーで
ポツンと椅子に座って流れる時間・・・・

何が起こるかわからないニューヨーク
レセプションパーティーから一転
ギャラリーには、最終的に400?500人もの人が訪れて
この多様な表現は、全部あなた一人の作品なのか?
この表現は、どうしてあなたのなかに生まれたのか?

と、ある程度の手応えを感じさせてくれる反応があった。

そうして日本に戻って

アグレッシブとは、かたちに捕らわれず
自分たちに出来そうなことは
どんな形でも、ためらわず
俺達流に発信してみる

築いてきた洋館と自然の庭、植物、石組み、蝶、
もてなすとは空間だけでなく、景観の中にもてなすこと。
俺達には、実際に体験し、実現している景観への提案がある。

土で自然を写し取る表現の場は、
          空間以外にも広げられるはずだ

新しい出会いをつくり
俺たちの視線や考え方を、映像や写真に変えて
多様な俺達を、伝えられるかもしれない。

ニューヨークでは、身体は休めたかもしれないが
日を追うに従って、

使ったことのない頭を動かしすぎて
         また、くたびれてしまった。

帰ってきてからも、これからの課題も、問題も山積みで
正直なところ、いろんな面でもう限界を越えている
まず自分の環境を整理することが、一番

数日前、

久しぶりに弟子たちと酒を酌み交わすと
うなずく顔も、返ってくる言葉も
同じカウンターについた、その姿から伝わる雰囲気に
成長し大人びてきた波動を感じて
若い力が着実に育ってきていることが
心強い。

ニューヨークでのヒント、土の写楽。
               職人社秀平組の第二期。


(帰国3日前ダウンタウンに誘ってもらった夜)

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