『のたうつ者』 出版       2008. 10. 08  記

去年の12月頃、地元毎日新聞の記者から、東京の出版部の人物と一度、時間を作って欲しいという連絡を受け、都内、歌舞伎座あたりの喫茶店で、その人物と会ったのが事の始まりであった。
いきなり、本を出してみませんか?・・・という。
その本は、【 塗り壁 】 の写真集とかではなく、【 生き方 】 のような本で、あなた自身が書いてもいいし、こちら側で取材をして作る方法もある。

いずれにしても、しっかりと応援するので考えてみませんか・・・・という内容の話であった。
その時すぐ、自分は、≪やってみたい!≫・・・そして同時に、≪やらない方が無難だ!≫と、頭の中が2つの考えに迷い、判断がつかなかった印象だったことを思いだす。


その前に、この本の話以前から、自分の中に抱えて、淀んでいる思いがあった・・・・・
ひとつは、これまで数回に渡り、メディアで扱われてきた自分のイメージが、美しすぎる形で表現されていること。けれど一方で、いまだ自分は、昔の苦い経験から少しも開放されておらず、闇の部分を取り払えないでいる事。
この相反する自分が、それぞれに大きくなって存在している様な、2人の全く違う自分が別々の方向を向き、広がってゆく違和感に、また息苦しさを感じていたのである。

【 昔の苦い経験 】 とは、当然、前の会社の時代の事だが、自分にとって独立の決意は、その環境から離れたいというか、吐きもどすような思いを、忘れる事がまず一番の目的であったし、だからこそ、一からのスタートを始めて、自分を少しでもやり直したい。40歳という年齢を目前に、せめてこれから先の人生を、人間らしく自然に、自分らしく生きてゆきたい!

それなのに、7年の月日が過ぎた今でも、
どうしても、どうしても当時のことを思い出し、焼きついたものが取り払えない!。
仲間の職人達に、苦しかったあの頃を、
いつの間にか当時の顔色に戻って、醜く口走ってしまう自分に・・・。

職人達は、 『秀平!お前の気持ちは俺達だって手に取るように分る!! でも終わった事だからもういいじゃないか、昔の事は忘れよう』 ・・・・と、何度、繰り返してきたか分らない。
しかしその思いに、蓋をすればするほどに大きく、体中に蔓延して苦しくなってしまう。
自分だって忘れてしまいたくて仕方がない。でもそれが出来ないままに、ただ時は過ぎていた。

そんな中で、分ってきた事がある。
蓋をするんじゃなくて、吐き出す事で少しずつでも処分していく。 全てを処理する事は出来なくても、こうだったんだ・・・・と、吐き出してしまう事で少しだけ、かすんでいく感覚があった。
ある日、自分を最も知り、長く見てきた職人が、 『 俺達は無理やり、お前に蓋をしようとしてきたが、そうだな、お前にしたら吐き出すしかないのかも知れないな・・・』  
『 それで少しでも済ませられるのなら、そうした方がお前にとっていいのかも知れない。 』 これが現在のブログの一部 【 遠笛 】 を作り、
ゆっくりと処理できるよう、少しづつ始めたものであった・・・・。

自分は、昔のことを引っ張り出し、その恨みに近い思いを相手にぶつけたいのではない・・・
当時の事が今においてもフラッシュバックし、処理できず、もがき続けているだけだ・・・
むしろ忘れたくて、その思いを消したくて仕方がないのである。
もう、争いや、思惑深い駆け引きや、体裁と言った事から、無縁でいたいだけである。

そんな折、ある取材のライターとして作家の吉永みち子さんに出会った。
俺はその時、短い時間だったけれど、
これまでになく自分の内側にある思いを、彼女に語ってみた。

それから数ヵ月後、その取材記事を見た時、自分の思いが本当に納得の行く形で、表現されていて、何か、頭の芯にある、凝り固まっていた呪縛が少しほどけて、
開放されたような気分になって確信した。
その文章を、いつも持ち歩き、夜中の高速SAで、
一人の事務所で、何十回と繰り返し読んだ・・・・・。   
・・・・≪うまくいえない、でもなんだか救われるような気持ちに落ち着いてくる。≫・・・・
そんな時の出版の話であった。    それでも、迷っていた

・・・・数ヵ月後。
・・・・迫田の、一年もの、前の死を知った・・・・。
それは異常に淋しく、酷く、孤独な死であったに違いない。
     俺には解る、その死にぎわに迫田の心に浮かんだ途切れた言葉が見える。

本をやろう!!  やりたいと決心がついた。

迫田という人間が生きていた事を、迫田の生きた強さ、弱さ、単純で純粋で、
何者にも変え難い人間味。 『バカヤロウ!』 と聞こえる迫田のどなり声。
2人の事を書き、迫田を書かなければならない。
今、俺が迫田の生ざまを示し、迫田を追悼しなければ申し訳がない!

本づくりは、これまで、吐くように書き続けてきた文章と思いが、沢山あったから乗せ始めれば切りがなく、意外に早く出来上がったように思う。
タイトルは 【 のたうつ者 】 で、いきましょうと言う・・・。もちろん、なんの異論もない。

今、こうした本を、示した事だけで、十分だと感じている・・・。
これ以上も、これ以下でもない。これでいい。

毎日新聞社、奥村博史氏、原稿構成の緑慎也氏、他、関わった方々に感謝している。

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