こころの内側 その(二)

美しいと感じることにひかれ
       少しでも、美しいものを作りたいという
                       憧れがある

かつてこの国は、
       こうした美意識で作られていた

色も形も、肌合いも・・・
       一筋引いた線も、言葉も・・・

どれをとっても奥深く、一様ではなく
      さらりと削げていながら、緻密で複雑に
                  作られていたこの国の風景

三味線の音色に目を閉じると
      我々の心深い、つぼみの中に閉じ込めてある

厳しさと激しさ、もろさと哀れさ

この音色は、我々日本人に宿っている、
             余韻を放つ孤高の花

光と闇の間を
     つま先立てて歩む、1本の綱の響き・・・
                いつかの死後の美意識へ

我々は、我々の源流の血を
         蘇らせなければならない

                 我々の風景が今、消えかけているから

都会の片隅で
    雨に濡れてあるく

でこぼこのアスファルトに溜まった
     黒い反射の光を、うつむいて追いかける

通り過ぎるライトと
       ビル群の角度の光が
             ふりむいて消える

街の明かりの二重の影・・・

本当の自分を
    その命の形を知りたいのなら

誰もいないひとりの場所で、
        その影を見つめていること

樹林が落とす複雑に交差した、静脈の影の中へ
        霜だった結晶の角度の前に立つことである

この生温かく膨張した、とぎれとぎれの自分を
            つめたく固めてつなぐこと

                    ひえた身体で黙っていること

圧縮や印刷をして
     ひとを超えた熱で
           計算し機械的に形成されたもの

ひとがその手で集めてきた
      ≪土≫や≪木の葉≫や、たとえば獣の体毛でもいい

それらを水で混ぜ合わせ、
       塗りあげることでひとつにしたもの

それは我々のその手で
      計算し塗られるが、それで終わらず

我々は乾燥と同時に、
        祈らなければならない・・・

それが一晩なら、
      祈りながら、いつの間にか眠る

一度、自然にあずけて、YESかNOかを
                待っていなければならない

土壁が、人を超える肌合いを生み出すのは
             こうした汗を自然に捧げているからである

一人旅をしてみたいと思う

川に沿って走る車窓のあてのない旅を

夜明け前の霧が立ち込めた
        知らない土地の草の道を進んでゆくような旅

戻ってくる場所がある
戻るべき人がいる

重く、ぶれず、決して動かぬ存在
      表も裏もない水平の大地の広がり
                子供の頃から見慣れたいつもの岩

今いる自分と知らない自分へのイメージの中へ
           この奇跡のような連続の中に

もしかすると、ゆっくりと痛みを伴わず
            俺は死んでいるのだろうか?

戻るべき場所がなければ
        飛び立ってゆくことは出来ない

東京に感謝している

私は東京に救われてここまでをきた

救われたとは
    人間らしい自分を取りもどさせてくれた東京もある

チャンスを与え
     その結果で判断される

表現できる場があること
さあ!やってみようという意識があること
やぶれたということがわかる事

なぜなら私は
    地域のしがらみに入る事も出来ず
              飛騨で死んでいたから

麻布十番、六本木、溜池山王・・・・

地下鉄のホームに立ち
       排気の風を全身で受けて
                 私はふるい立つ

生温かい風にふりむいた

照りつける強い陽射しをさえぎりながら
          分厚い雨雲が通り抜けようとしている

樹林を弓のように
      しならせる風と火花の光が襲うと

斜線の雨が大気をきざみ、
       木の葉や地表のすべてを、残らず濡らし過ぎてゆく

嵐は去り、ふたたび淡い陽が射し込むと・・・

木々の葉先の水滴が、
       光の十字にこぼれて落ちて
                大気をみどりに染めていた

今、冷えた風に吹かれているのは、
         雨がすべての熱を奪って流し、
                雨の熱を地中が受け取ってくれたからだ

ちぎれた枝葉を集めていると、
      その手の先に、つぼみの花が折れていた

それでも、過ぎ去った雨は・・・
             天と地をつなぐ雨だと、わたしは思う。

赤土の斜面まで手を引いて、感激し
         ぬかるんだ泥に素足で笑いあえば

生まれた国が違い
     言葉も違い、習慣が違っても

男でも、女でも
     老人でも子供でも誰でもが
            通じ合うことが出来る

木の実をひろって火を起こそう

そして、光と水と土で生み出す
        塗り壁を皆で作っておどろけば

国境や、言葉の意味はなくなって
             まあるくひとつになってゆく。

白い太陽が現れて沈むと

青い夜がやってきて
   とがった杉の群列が
       いっそう黒く天をさす

その時たったひとつ、一点の星がまたたく

その星を見のがしてはいけない

青い夜に輝く星が、
      進むべき方向と希望の道を
              教えているからである

いつもの場所へ急ぐ

火炎のように揺れ動く竹林の中から
         向き合ったまま動かず

その星を全身で射して
         この皮膚を目に変える

100%のウソと
100%の真実がぶつかりあうと

真実はうすれ、
    汚れた真実となって残ってしまう・・・

なんだか華やかな晩餐や、
       讃えあって交わす時間も
             妙に虚しくなっている時がある

生きたまま死に、生きたまま消えてしまう
             実体さえ薄れているのである

いつの間にか大きくなっていた
         心の中の誇りやプライドに気づいた時

それが何だと聞こえてきて、
         昨日までを生きた自分の否定がはじまりだす

それは

どこまでが本当で、どこからがウソなのか解らないから

答えのでない迷いから抜け出すには
         今を生きているという絶対の実感しかない

鳥肌がたつような身体ごとの反応と
         両手を目の前に、割れた爪の指先の、
                     10の神経に驚く事

そして、
  茜に染まった圧倒的な無限の雲に土を踏み、

感情の全てを開いてそのまま、
          自分で立っている今を、
                  感じているしかない

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