真空の日、午前10:00

斜面に崩れおちた霜柱
濡れてはりつく地べたの枯葉

水みどり揺れるうす氷のレンズ


冬の終わり
春遠いひかりのなかで
私は冬の殻に覆われた身体

草間の白い根を
かがみこんで覗き
地表が吹き出す
3月午前の湿り熱れ(しめりいきれ)に汗ばむ

立ち上がると
冬の身体を覆った殻がひび割れ
膝や肘から滴り落ちている

吐く息からも手のひらからも
滴る液は風と空にさらわれて
私が奪われているのだ

雲は筋を引いて薄れ
迎えくるような青に消えて
空、カラカラン
このまま今が消えたとして残る願い

ふと視線を戻すと、
樹林の地表は絹の布

真空のひかり、冬の殻から・・・

肩から、背から、白い糸が流れて
布の端へ向かって伸びていった
糸は布の端を持ち上げ
私へ引き寄せていく

幾本もの糸は
四方の布を折りたたんで
私を包み空をふさぐ

これまで目にした懐かしい光景と
見果てぬ夢の数々を
一斉に映しだす多面

小さく小さく折りたたまれた布は
やがて小さな楕円の塊

冬でもなく
春でもない真空の繭

空に枯葉がこすれあい
真空のひかりカラカラン
牙、白磁、白骨の太陽、垂直の影

繭は消えた
雲は薄れた
空は流れた。

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